生まれ変わる、家具と馬具。
──COSONCO QS(コソンコクス)

北海道に拠点を構える家具メーカーのカンディハウスと馬具を手がけるソメスサドル。製造の過程から生じる端材に、次なる可能性を見出し、合同で立ち上げる新たなブランド「COSONCO QS(コソンコクス)」とは。

北海道の中央にそびえる大雪山から、西に向かってゆったりと蛇行しながら、日本海へと流れる石狩川。美しい大河を挟むようなかたちで存在する家具メーカーのカンディハウスと馬具をはじめとした革製品を手がけるソメスサドルは、ともに1960年代創業の、北海道を代表するメーカーだ。

家具と馬具という異なる業界にありながら、ともにハイレベルなものづくりを目指し、ときに技術協力というかたちで関わりをもってきた両社には、ともに生産の過程から生まれる端材をどうにかして再利用したいという共通の望みがあった。相談を受けて、工場に赴いたデザイナーの倉本仁は、素材を見た瞬間、思い描いていたものとのギャップに衝撃を受けた。

「“端材”と聞くと、不必要になった使えない素材という印象ですが、そこにあったのは端材と呼ぶべきではない優良な材料ばかり。素性を生かして、より豊かなモノの価値が作れると直感したのです」

上質なものづくりを目指すメーカーだからこそ、扱う材料の基準は確か。しかしながら、手がける家具や馬具はサイズが大きいため歩留まりの調整が難しく、一定量の良質な余剰材が常に生まれてしまうという。

倉本は、なんとかしてこの貴重な素材の魅力を最大限に引き出したいという気持ちから、アートオブジェと機能的なプロダクトの中間に位置する「Functional Toy」という存在を目指した。かわいらしい北海道の動物をかたどった置物や建築物のフォルムを展開したブックエンドや小物入れ。そして、遊び道具やスポーツ用具などから発想を展開したオブジェ。卓越した職人の技に裏付けられた、滑らかなに削り出された木目やレザーの上を交差する細やかなステッチが、造形美をさらに際立たせる。

「暮らしのなかに置いて、目や指先で愛でることで心が豊かになる。便利な機能性はなくとも、十分に心理的な作用をもっていると思うんです」

コソンコクスは日本のものづくりが、単なる確実で丁寧なものに留まらず、人の心に静かに浸透し、ともに進化を遂げていく可能性をもっていると物語っている。

  • Text: Hisashi Ikai

倉本仁[Jin Kuramoto]

1976年兵庫県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、家電メーカーを経て、2008年にスタジオを設立。ストーリーを明快な造形表現へと転換し、家具から日用品、家電、自動車まで、幅広い分野のデザインを手がける。

http://www.jinkuramoto.com

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