東京を拠点に、国内外で多彩なデザインプロジェクトを手がけるグエナエル・ニコラ。新プロジェクト〈TEN TEN TEN〉のシンプルな形に込めた、プロダクトの価値とデザインの可能性とは。
研ぎ澄まされた感覚と泉のように生まれるアイデアを巧みに紡ぎ、世界のラグジュアリーブランドや高級ホテルのインテリアから、家具、そして香水のボトルにいたるまで、グエナエル・ニコラの活動はとどまるところを知らない。
あるマンションのリノベーションプロジェクトでは、空間のみならず、そこに置かれるさまざまなアイテムも一つひとつデザイン。そのなかから生まれたのがこの〈TEN TEN TEN〉だ。
「通常ならば、特定の機能や目的に沿うかたちでデザインを整えていくのですが、このプロジェクトでは、すべてのアイテムを同じ概念から発展させることからスタートしました」
京都・西陣織の老舗「細尾」を筆頭に、日本のものづくりの骨幹を支えるトップの職人、メーカーと協業し、完成した12のアイテム。コップ、茶筒、茶びつ、ワインクーラーなど、それぞれ異なる機能、役割を持つプロダクトが、すべて同じ70度に傾斜した円筒形で統一されている。



この傾斜角は、ものと対峙したときに、無理して覗き込もうとせずとも、自然に中身が見える角度。ものと人との関わり方を意識した、もてなしの気持ちの表れとも呼べる形だ。
既成概念から大胆に逸脱しながらも、素材の特性やものづくりのプロセスを新たな視点から再検討。個々のプロダクトに関連を持たせつつ、インテリアと融合する美しい風景を作り出していった。
一旦完成に辿り着いたプランだが、グエナエル・ニコラは手を緩めることなく、さらにアイデアを拡張。各メーカーと話し合いを重ねながら、一般にも販売可能なプロダクトとしてプロジェクトを継続することとなった。その第一弾として、3月4日に、ガラスメーカーのSghrスガハラからグラスセットが販売となる。

「これまではクライアントから依頼を受けてデザインを考えることが当たり前でしたが、デザインをサービスのように提供するだけでは不十分。クライアントととともに歩み、好奇心を掻き立て合うことで、より刺激的な時代を作り出すことができる。この〈TEN TEN TEN〉では、一つのデザインソースを多様に活用しながら、これまでにない新しいプロダクト、そして感覚が生まれることを目指したいです」
今後も多様なメーカーや職人とコラボレーションを重ね、さらに多くのコレクションを発表したいと考えている。