熊本で“折り葉”を手がける渡邊義紘。アールブリュットを超えた、生命の表現が一冊の本にまとまった。
クヌギの葉を折りながらゾウ、トラ、ヒツジ、キリン、サルといったさまざまな生き物を表現する、折り葉アーティストの渡邊義紘。長さ10~15cmほどの細長く、葉先がギザギザしている自然のクヌギの葉はどれも不均一な形をしている。さらに扱うのは落ち葉なので乾燥の具合によって質感もそれぞれに異なる。そんな個性的なクヌギの葉でも、渡邊は手にするとわずか10分ほどで折り上げてしまうという。




幼少期に自閉症と診断される一方で、大好きな生き物たちの姿を切り絵や折り葉に映してきた渡邊。驚異的な造形力で13歳より作品を発表しはじめ、2018年以降は年数回のペースで展覧会に参加するなど、作家としてコンスタントに活動している。
渡邊の作品は緻密で繊細な手技に注目が集まりがちだが、それにもまして際立つのが、作品が放つ生命の躍動だ。同じ生き物を手がけたときにポーズが異なるのは当然で、ときに首ももたげて雄叫びをあげているようなものや、尻尾を高く振り上げていまにも駆け出しそうな姿勢を取っているものもいる。
これまで展示会で発表するにとどまっていた作品群をもっと広く見てもらおうと、作家の母の渡邊仁子が発起人となり、写真家·白木世志一が作品を撮り下ろし。作家のポートレイトや日常を織り交ぜながら作品集『ORIHA 渡邊義紘作品集』としてまとめた。
この作品集は、2021年12月23日より発売開始。美術評論家で東京藝術大学名誉教授を務める秋元雄史が序文を担当している。
