子ども時代に「児童館」で遊んだ記憶がある人も多いだろう。健全な遊び、情操教育という理念をもとに生まれた公共の施設は、放課後に安全、安心な時間が過ごせる場所であったことには間違いはないが、そこでどれほどワクワクした体験を得たかというのはなかなか難しい。
東京の代官山ティーンズ・クリエイティブは、渋谷区が所管する公設の青少年施設ながら、独自の運営手法により自由でクリエイティブな体験ができると注目を集めている場所だ。
「子どもだから、大人だからという既成概念にとらわれず、日常の生活の延長線上にあるような居心地の良い場所であることを目指しています」
そう語るのは、施設スタッフの岡磨理絵さん。代官山ティーンズ・クリエイティブは、対象年齢が小学1年生から25歳までと幅広く、小さな子どもと高校生や大学生が普通にやりとりしている姿も日常的に見られる。また、渋谷区の施設ながら、区外の人でも利用できるため、違うエリアの学校に通う人とも知り合いになれる。


「年齢や地域はもちろんですが、さまざまに 違う人たちがここで出会い、交流していく。ここでは人と違うことが目立たないというか、違っていることが当たり前という感覚があるかもしれません」
障害も肌の色もここでは個性の一つ。それを特別囃し立てたり、蔑視するような感覚が代官山ティーンズ・クリエイティブには存在しないようだ。
こうした基盤を支えているのが、平日に開催される「ミート・ザ・クリエイターズ」というコンテンツだ。ダンス、アート、書道、ヘアメイク、音楽、料理など、各分野の第一線で活躍するプロが滞在。無料のワークショップや意見交換会を楽しむ時間が、なんと日替わりで用意されている。さらに、週末に開催される「アートスクール」というコンテンツも含め、新しい出会いを通じて、自分の将来の夢を思い描き始める子どもも多く、卒業生のなかにはプロとして活躍をはじめたアーティストもいるという。
学校や家庭だけでは教えられないこと。それは子どもが自分で考え、自力で道を切り拓き、進んでいく姿かもしれない。


「なにもない、ゼロから作り出すことがクリエイティブであり、それこそが人間が持つ最大の力のような気がします」
未来を創り上げる子どもたちのために、岡さんをはじめとする代官山ティーンズ・クリエイティブのスタッフたちは、より刺激的なプログラムを用意していきたいと語る。