アートディレクターとしての活動の傍らで、コラージュ作品を作り続けている吉田昌平。9年ぶりにシリーズ『KASABUTA』を発表する吉田に、コラージュを続ける意味を聞いた。
「つくっているときに見える、余白や間が好きなんですよね」
第一線で数々のデザインワークを手掛ける一方で、紙を細かく切り刻んでは、貼り付けながら再構成していくコラージュ作品をつくっている吉田昌平は、ぽつりとつぶやく。
吉田にとって、コラージュは日常の行為の一つ。何気なく起こったことを綴っておく、日記のような存在だとも話す。身近にあったもの、たとえば古い雑誌やパッケージなど、家のなかにころがっているものを集めては、好きな形に切り貼りしていく。
「紙という素材と、切り貼りする行為がとにかく好き。偶然を楽しみながら、切り貼りでどんどん形をつくっていく。偶然なのか、必然なのか。その隙間みたいなところを楽しんでいる自分もいます」
過去の作品集のなかで、森山大道の写真集を題材にした『Shinjuku Collage』や、写真家の本多康司とシベリア鉄道で旅するなかでつくった『Trans-Siberian Railway』を除けば、普段のコラージュ作品にはテーマもルールもない。
「キャンバスに油彩を描いている画家が、ラフデッサンで習作を重ねる。コラージュの制作は、そんな感じにも似ているのかもしれません。あくまでも感覚的につくっているので、その日あったできごとにも影響されやすいんですよ」
このように無意識のなかでつくった一連の作品を吉田は「KASABUTA」と呼んでおり、展覧会として発表するのは2013年以来9年ぶりとなる。

「これまではA5サイズで仕上げることが多かったのですが、今回はB2サイズと大判。いつもとは全く違う大きさなので、制作の感触も、全体を見た時の印象も大きく異なります。さらに初めての立体作品にも挑戦してみました」
どんどん進化していく吉田昌平のコラージュ作品。これまでにはないサイズ、フォルムの作品群を前に、どのような感覚、感情が現れるのだろうか。
7月1日からスタートする展覧会では、平面9点に加え、モビールをはじめとして立体も数点展示される予定だ。