大量生産された普遍的なデザインに、ある特定の機能を付加することから見えてくる多様性とは。建築家、元木大輔がインスタグラムで発表したプロジェクトが、京都市京セラ美術館のリアル空間で新たな展開を見せる。
建築家として多様なプロジェクトを手がける一方で、既存の素材やプロダクト、空間、環境を異なる視点から見つめ直し、新たな価値を模索していく元木大輔。彼の最新のプロジェクト「Hackability of the Stool」は、大量生産のもと世に普及するスツールにちょっとした機能を加えることで、プロダクトに個性的な表情と機能を与える、ユニークなプロジェクトだ。
元木が目をつけたのは、20世紀のデザインアイコンとも呼べるフィンランド、アルテックの「スツール 60」。アルヴァ・アアルトがデザインしたのは、丸い座面にL – レッグと呼ばれる曲木の脚がついた極めてミニマムな形だ。
元木は、最大公約数を目指すために削ぎ落とされたデザインに、あえてニッチでささやかな機能を付加。改変可能性を追求するため、スツール 60のほか、世に多く出回るリプロダクト(模造品)も取り入れながら、座面に穴を開けたり、ローラーをつけたり、持ち手を加えたりと、その発想は極めて自由だ。ほんの少し目線を変え、手を加えるだけで、これほどまでに多様なプロダクトの形が生まれることに驚かされる。


当初、インスタグラムのオンラインエキシビションとして発表したプロジェクトが、リアルスーペースを用いた展覧会へと発展。昨年の中国・杭州に続き、3月15日から6日間にわたり京都市京セラ美術館で開催される。本展では、アルテックの協力も仰ぎ、100脚のスツール 60をそれぞれに改変。柔軟な発想から、拡張可能性の魅力を探っていく。