すべての本質は、土に還る。
「MINO SOIL」展リポート。

岐阜県美濃地方に伝わる陶磁産業の価値を再発見するために開催されたMINO SOILの展覧会「ARCHAEOLOGY OF MINO」。スタジオ・ムンバイがインスタレーションを手がけた会場には、さまざまな表情を見せる土の塊がいくつも並ぶ。

床に等間隔に置かれた一辺が15センチほどのキューブは、採取した原土のまま乾燥・焼成したもので、その一部にはリサイクル土も混合している。対を成す白と黒のオブジェは、なんと廃業した原料メーカーのタンクのなかで20年間放置されていた粘土の塊を焼き上げたものだとか。また、会場奥には、6000万年前にできた風化花崗岩「藻珪(ソーケー)」を小高く盛った土の山も見える。

さらに、原土を採掘する鉱山をダイナミックなランドスケープのように捉えた高野ユリカの写真作品と、録音家、藤口諒太が録音、編集した美濃の鉱山に響くサウンドが、会場に独自の空気感を作り出していく。

本展は、これまでに建築家やデザイナーに向けたタイルのオーダーメイドプロジェクト「TAJIMI CUSTOM TILES」や窯元に残るデッドストックタイルなどを一つから購入できるECストア「TILE KIOSK」を展開してきたプロジェクトチームが手がけたもの。

会場を出たときに頭を巡っていたのは「モノはどこからきて、どこに向かうのか」という根源的な疑問だった。我々が「美濃焼」という言葉から想像するのは、タイルや陶磁器といった身近なプロダクトだが、それらすべてが会場内に陳列されている自然土から派生したものであり、そもそも素材にも強烈な魅力が存在している。美濃の焼き物の本質的な魅力とは、生活を彩る美しいかたちを作り出す以前に、これら素材の個性を作家や職人、メーカーがいかに読み解き、それぞれの適性を巧みに導き出す技にあるように思われた。

日本を代表する陶磁器産業の聖地が現状に甘んじることなく、こうした実験的なプロジェクトを通じて、次世代につながる新たなフェーズに歩みを進めている様子は頼もしく感じる。

  • Text & Photo: Hisashi Ikai

スタジオ・ムンバイと
土を見つめ、土を考える。

日本最大の陶磁器の産地である美濃の原点、土の可能性を探るべく、岐阜県多治見市の2社が建築家、ビジョイ・ジェインとともに、プロジェクトを始動。皮切りに東京で企画展を開催する。

全国各地に日本はさまざまな焼き物の産地があるが、なかでも岐阜県の美濃エリアは、実に自由な発想に満ちた表現の焼き物文化が存在する。日用の食器や美術工芸品はもちろん、タイルなどの建材や工業用フィルターなど、実に幅広い。

しかし、産業が発展するほど、次第に産地の現状や素材の魅力からも我々の意識は遠のいているようにも思う。

岐阜県多治見市にある、タイルの開発を行う「エクシィズ」と、食器の専門商社〈井澤コーポレーション〉は、焼き物の原点である土そのものを改めて見つめ直し、未来へのビジョンを探るべく、プロジェクト「MINO SOIL」を立ち上げた。

マテリアルの可能性の追求にはじまり、今後は美濃にあるさまざまな技術の紹介、プロダクトの展開を図っていく予定だが、その第一弾として、世界的に活躍する建築家、ビジョイ・ジェイン(スタジオ・ムンバイ)とともに、企画展《Archaeology of Mino》を開催する。

会場では、スタジオ・ムンバイが手がけるインスタレーションを中心に、多様な種類の美濃の土を用いたプリミティブなオブジェ、さらにフォトグラファー、高野ユリカが捉えた鉱山の写真作品を展示する

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