ファンダー越しに見る都市と建築。
Interview with Jan Vranovský

BaBaBaで開催中の「Dear Takamizawa House」にて、写真作品を展示しているヤン·ヴラノフセキ。チェコから日本に移り住み7年。彼はどのような感覚で日本の都市や建築を見続けてきたのだろう。

ハイパー・メタボライズなニッポン。

1986年にチェコで生まれ、2014年から東京に移住し、グラフィックデザイン、建築、写真と、領域を横断したクリエーションを行ってきたヤン・ブラノフセキ。日本の近·現代建築を愛し、憧れをもって来日した彼だが、現実東京の街は想像したものと大きく異なっていた。

「時代、様式に統一感がなくいろんなものが入り混じっているし、時間をかけて丁寧につくられたもののすぐ脇にプレハブのような簡易的につくられたものが並んだりと、短い周期で激しい変化を繰り返している。常態が存在しない街の様子には、逆に現実的な魅力があると思ったんです」

生まれ故郷の首都、プラハに代表されるように、中世から近代にかけて形成された旧市街を残す都市の美しさを認める一方で、それらはあまりにも“静的”なため、停滞しているように見えたり、人間味がないようにも感じると語る。

「日本の街は美しいと問われると、正直答えに困りますが、僕にとってはとにかくエネルギーに満ち溢れていて、まるで生命体のように躍動しているハイパー・メタボライズな場所。だからこそ僕はここにいて、クリエーションを続けてるんでしょう」

ヤン・ヴラノブセキ

VBA2020日本館展示チームの依頼を受け、撮影のために高見澤邸に足を踏み入れた瞬間、ヴラノフセキは、普通の日本家屋の内部にも都市と同じような生命の存在があることを確信した。

「世代をまたいで移り住み、幾度となく改修を重ねるなかで、さまざまな要素が一つの空間のなかに堆積していった。ファインダー越しに家のディテールを覗くたびに、その輪郭が浮き上がってくる。写真というある瞬間を捉えるメディアのなかに、時間の流れが自然と映り込むとても貴重な体験でした」

ヤン・ヴラノフセキの作品が、建築写真でありながら不思議な情感をもったように感じるのは、そこにこの世界に生きる人々の軌跡が映り込んでいるからなのかもしれない。

  • Text: Hisashi Ikai
  • Photo: Jan Vranovský

ヤン・ヴラノブセキ[Jan Vranovský]

1986年チェコ生まれ。プラハのカレル大学で日本学、リベレツ工科大学で建築学を学んだ後、2014年に来日。東京大学大学院建築学専攻で小渕祐介研究室に所属する。2019年自身のスタジオ、VVAAを設立。

https://www.vvaa-studio.com

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