EMARF DESIGN FES #01

BaBaBaでは、木材をつかったものづくりをより素早く、自由に、安価に行うデジファブサービス「EMARF」に関する第2弾の展覧会、「EMARF DESIGN FES #01」を開催します。

本展覧会では、次世代の設計者の支援と育成を目指したオンラインプラットフォーム「EMARF CONNECT」第一期生の取り組みを展示。2022年7月から限定募集した100名の受講生と共に取り組んだ作品づくりのプロセスと結果を通じて、これから動き出そうとしているビジョンも紹介していきます。4つのコアデザインブースでEMARF CONNECTの魅力と可能性を読み解いていきます。その他、ワークショップやオンラインでのトークイベントも多数実施されます。

|会期|2022年9月23日(金) – 10月2日(日) ※休館日9月26日(月)

|会場|BaBaBa 東京都新宿区下落合 2-5-15-1F 

|時間|平日12-19時 土日祝11 – 18時

|EVENT|

ワークショップ

❶南信州タモ材でつくるフラワーベース
無垢材タモとテンプレートツールをつかってオリジナルフラワーベースがつくれます。
https://emarf-designfes-ws1.peatix.com

❷不揃いなタンコロでつくる木トレイ
木を山から切ってくる過程で捨てられてしまう根本の丸太「タンコロ」とテンプレートツールをつかって、オリジナル木トレイがつくれます。
https://emarf-designfes-ws2.peatix.com

❸手書きパタンでつくるスツール
手書きで書いた模様をGrasshopperをつかってデジタルパターンへと変換しオリジナルパターンスツールがつくれます(後日発送)。
tps://emarf-designfes-ws3.peatix.com

開催日時    9月23日、9月24日、9月25日、10月1日、10月2日

要予約制。EMARFホームページよりご予約くださいませ。

ガスーが、世界をめぐる。─ひらのりょう

昨年12月にBaBaBaでいち早く特別上映&展示されたアニメーション作家、ひらのりょうの最新作「ガスー』。独創的な世界観と高いクリエイティビティが評価されている。

ジャンルを超えて活躍するアニメーション作家、ひらのりょう。7年ぶりとなる新作『ガスー』は、タイを中心に東南アジア諸国に伝わるおばけ、ガスーが日本のヤクザと遭遇することからはじまる、独自のストーリーによるアクション&ホラー・ムービーだ。

BaBaBaでの特別展示には、ひらのりょうと親交の深い作家が多数参加。アニメーション作品の上映だけにとどまらず、ガスーをテーマにした絵画や立体作品、衣装のほか、ガスー特製アイシングクッキーも用意され、より広く、自由な感覚で作品の世界観を楽しむことができる展示となった。わずか1週間の展示期間にもかかわらず、アート関係者のみならず、子どもを含む一般客も大勢来場。メディアにも取り上げられた。

この展示をきっかけに2022年2月には恵比寿映像祭にて上映。さらにアヌシーアニメーション映画祭(フランス)を皮切りに、ファンタジア映画祭(カナダ)、アニミスト・タリン(エストニア)、コンコルト映像祭(イタリア)、インディ・アニフェスト(韓国)ほか、海外15ヶ所以上で連続的に上映が続き、ガスー旋風を巻き起こしている。

『ガスー/Krasue

監督:ひらのりょう

(日本/アニメーション/12分/2021年)

ひらのりょう

1988年埼玉県生まれ。多摩美術大学情報デザイン学科卒業。文化人類学から、フォークロア、サブカルチャーなど、多領域に意識を向けながら、ポップでディープ&ビザールな作品を手がける。アニメーションに限らず、イラスト、マンガ、紙芝居、VJ、音楽など、表現形態は多岐にわたる。代表作に『河童の腕』『ホリディ』『Hietuki-Bushi』など。

http://ryohirano.com

企画展「ひらのりょう監督新作短編アニメーション『ガスー』SCREENING & SPECIAL EXPERIENCES」は、202112 2026日の期間で、BaBaBaにて開催。

〈展覧会参加アーティスト〉

ひらのりょう:短編アニメーション作家/漫画家

井上涼:アーティスト

大橋裕之:漫画家

OperturaIndependent Animators 

冠木佐和子:アニメーション作家、イラストレーター

菊地雄太:造形家

キサブロー:着物デザイナー

最後の手段:映像チーム

重田介:映像作家

スケラッコ:漫画家

たかくらかずき:アーティスト、アニメーション作家

Q:アニメーション作家

矢野恵司:イラストレーター

山田遼志:アニメーションアーティスト

若井麻奈美:アニメーション作家

あおやま あや:お菓子作家

主催:株式会社コーズサッチ/FOGHORN    プロデューサー 谷川千央

助成:ARTS for the future

3日かぎりの、サマーマーケット。
―BaBaBa Market

大好評だった今年2月のBaBaBa Market。さらに新たなメンバーを加え、盛りだくさんのコンテンツで、8月19、 20、21日の3日間、再びBaBaBaで開催します。

2回目を迎える「BaBaBa Market」は、BaBaBaが運営する高田馬場のリアルスペースとウェブマガジンをオルタナティブにつなぐイベントとして、ジャーナルに登場したさまざまなクリエイターの作品をマーケット形式で紹介していく。

開催は、8月19日~21日の3日間。新たなメンバーも加わり、全10組が参加し、夏真っ只中の週末のBaBaBaが、賑やかなマーケットとしてオープンする。

● 吉行良平
大阪を拠点の活躍するプロダクトデザイナー。実験的なアプローチから生まれたユニークな作品ほか、オリジナルブランド「Oy」の商品も。

● Nutel
エッチングで描いたような独特のラインは、すべてミシン刺繍によるもの。独創的な造形の額装や動物をモチーフにした立体作品も展示販売。

● 中川正子
何気ない日常風景に眠る美しい光の世界を、ファインダーを越しに掬い取る写真家、中川正子。今回はオリジナルプリントほか、ポストカードやTシャツなどを展示販売する。

● 星佐和子
フィンランドで活躍するテキスタイルデザイナー、星佐和子のオリジナル原画を展示。そのほかテキスタイルや雑貨も紹介する。

TILE KIOSK
日本有数のタイルの産地、多治見一帯で作られたユニークなフォルムのタイルを、一枚から販売。

● 鰤岡力也
大阪を拠点の活躍するプロダクトデザイナー。実験的なアプローチから生まれたユニークな作品ほか、オリジナルブラ木工作家、鰤岡力也がデザイン、製作したスツールやテーブルを展示。受注販売する。

● 鈴木元
物事の真髄を極めた、無垢なデザインを手がける鈴木元の作品から、錯視効果のあるフラワーベース「OBLIQUE」ほかを紹介。

● BAILER
岡山でアップサイクルなものづくりを目指す、BAILER(ベイラー)。代表的な円柱形バッグを各種取り揃える。

● fuufuufuu
テキスタイルデザイナーとしての経験を生かし、木村文香が手がける見た目にも美しいグラフィカルな押し寿司を販売。

● LAND(生花)
繊細で独創的な色合わせが話題のフラワーアーティスト、川村あこがアレンジした生花を販売。彼女セレクトのフラワーベースも揃う。

  • Text: Hisashi Ikai

BaBaBa Market Vol. 2

2022819日(金)21日(日)

1118

BaBaBa

東京都新宿区下落合2-5-15-1F

TEL. 03-6363-6803

Drag Queen Story Hourが
BaBaBaにやってくる!

3歳から8歳の子どもたちを対象に、ドラァグクイーンが絵本の読み聞かせを行う「Drag Queen Story Hour」が、夏休み期間中の7月と8月に、BaBaBaでの連続開催。読み聞かせに加え、今回だけのスペシャルプログラムも行われる。

2015年にサンフランシスコでスタートし、2018年日本にも上陸した「Drag Queen Story Hour」。昨今話題のLGBTQや多様性の意識はもとより、何よりも先入観や既成概念にとらわれず、子どもたちと自由な感性のふれあいを目指して、ドラァグクイーンが絵本の読み聞かせを軸とした独自のプログラムを展開してきた。

これまで全国各地の児童館や美術館などで活動をしてきたDrag Queen Story Hourが、ついにBaBaBaにやってくる。従来のプログラムに加え、今回はスペシャル企画として、変身コーナーも登場。

簡単な工作をしながら、常識にとらわれず、思い通りの自分に変身する。ドラァグクイーンが色とりどりのドレスをきて、ちょっと派手なお化粧をして、自分の好きな姿でいるみたいに、色紙を切ってカラーネールにしてみたり、ビニール袋をマントやスカートにしてスーパーヒーロー/ヒロインになったり、画用紙で大きなツノをつくって怪獣やおばけになったり。

子どもたちだけでなく、このときは大人も一緒に変身を楽しみます。大好きな自分になったら、ドラァグクイーンや一緒にきた家族、友達との撮影タイム。

これまでの『もるめたも』展やひらのりょうのガスー展の開催時には、同じ通りにある保育園、幼稚園に通う生徒や、近隣のおとめ山公園に散歩に訪れた家族が立ち寄るBaBaBaが、地域交流や児童支援を考え、夏休み期間中の7月、8月に連続開催します。


7月31日のプログラム

読み聞かせクイーン:オナン

・絵本の読み聞かせ/3冊の絵本を、ドラァグクイーンが読み聞かせ。
・おはなし/絵本にまつわる話題を、子どもたちと一緒におしゃべり。
・変身コーナー/かんたんな工作で。自分の好きな姿に変身。
・撮影タイム/変身した姿で、ドラァグクイーンと一緒にパチリ。

  • Text: Hisashi Ikai

Drag Queen Story Hour in BaBaBa

828日(日曜)

開始:13時 終了:15時(予定)

*要予約

参加費:子ども(3歳~8歳)、および同伴者は無料。大人のみの参加は1,000円。

定員:子ども 20名(先着順)

予約:下記リンクからお申し込みください

協力:ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京、日本児童教育専門学校

 

https://service.underdesign.co.jp/drag-queen-story-hour-in-bababa

写真と印刷の境界に広がる、
表現の無限性。

写真家の三部正博と印刷ディレクションを行うパピエラボの江藤公昭が、展覧展「PRINT MATTERS」に求めたものは何か。写真、印刷の表現領域とはなにか。2人に聞いた。

フィルムで撮影した像を印画紙に焼き付ける写真と、版面にインクを塗布して紙に写しとる印刷。同じ「プリント」という工程を持ちながらも、その手法、表現は大きく異なる。

似て非なる存在の写真と印刷、それぞれの分野で活躍する三部正博と江藤公昭が初めて協働したのは、2009年のことだった。

「年賀状用のポストカードを江藤さんに作ってもらおうと相談に伺ったのがきっかけ。それからプライベートでも頻繁に会っていますが、年に一度のポストカードづくりは、いまだに続く年末の恒例行事になっています」

軽やかに話す三部に対し、江藤も笑いながらこう加える。

「三部くんとの制作は、毎回とても難解になってしまうんですよ。活版印刷はインクが乾きにくいため、一日で刷る通常1色。それを4色、5色掛け合わせたいとなる。印刷所の人にしてみても、たぶんパピエラボがお願いしている仕事のなかで一番面倒な内容じゃないかなって思っちゃいます。でもその度に、先代の社長は『また今年も来たのかよ!』と大声を上げながらも、なぜかニコニコと嬉しそうでした」

無理難題とも思えるプランが職人魂をくすぐり、予想をはるかに超えた結果をもたらす。毎年多様なトライアルを重ねてきた2人が、元印刷所だったBaBaBaの存在を知った時に、また新たな挑戦を重ねてみるのも面白いと思ったのは、ごく自然なことかもしれない。

本展は、三部がここ数年撮り続けているランドスケープ写真を、江藤のディレクションによって、さまざまな印刷手法によって多様に表現してみるというもの。ユニークなのは、写真も印刷もより高解像度、高精細を目指す方向にある時流に逆らうように、写真を表現するのに最適とは言えない手法を敢えて用いている点だ。

「写真をきれいに表現する方法はもちろんありますが、僕が面白いと思うのは、印刷によって可能な表現を、到達点が見えない状態から探ること。三部君とやりとりしていると、敢えて想定できないことにチャレンジしたいと思えるんですよね」

活版印刷、リソグラフ印刷、シルクスクリーン印刷という異なる工程を掛け合わせ再現された三部の風景写真。モノクロで再現したシルクスクリーン印刷の作品は、光と影が際立つ切り絵のようでもあり、リソグラフ印刷で仕上げたものは、絶妙なドットがブラウン管で見た映像のようにも見える。その一点一点がまったく異なる表情を纏っており、見るもの想像力を巧みに掻き立てる。

「何をきれいだと思うかは、人それぞれですし、環境によっても大きく変化するもの。僕自身は自分の感覚に限界を設けず、常に超えていきたい。それを他者の力、印刷の可能性を借りて飛び越えていけるのは、ワクワクします。江藤さんや印刷所の方々が、トライアルそのものを楽しんでいる様子を見ているのも刺激的でしたね」(三部)

「印圧やインクの量を紙ごとに変えられる活版印刷の特性を生かすために、古道具屋や紙問屋の倉庫に眠っていたデッドストックの和紙や、包装などに使う半透明で光沢のあるグラシン紙のなど、多様な用紙をセレクト。印刷手法の違いだけでなく、職人の感覚と熱量は仕上がりに大きな影響を与えるもの。今回のトライアルは、印刷を通じて人の多様性や感性の奥深さに改めて触れたような気がします」(江藤)

会場には、10種の写真を3通りの手法で印刷物に仕上げた作品のほか、三部正博のオリジナルプリントも展示。正統な写真表現と、そこから大きく飛躍した印刷表現のはざまを行き来しているうちに、また感覚の渦がぐるりと動く気がした。

三部正博[Masahiro Sambe]

写真家。1983 年東京都生まれ。泊昭雄氏に師事後、2006 年に独立。主に静物、 ポートレート、ファッションを被写体として、広告、雑誌、カタログなどの分野 で活動する。近年、ライフワークとしてランドスケープを撮り続けている。

http://3be.in/ 

パピエラボ[PAPIER LABO. ]

「紙と紙にまつわること」をテーマに 2007 年に開店。好みと縁を頼りに世界中 から集めるプロダクトやオリジナルプロダクトを取り扱う。印刷物やロゴなどのデザインや、活版印刷をはじめとした印刷、紙加工のディレクションも行う。

http://www.papierlabo.com/

PRINT MATTERS
MASAHIRO SAMBE & PAPIER LABO.

会期|2022年5月17日(火) – 5月31日(火)  
※5月23日(月)休み
※5月21日(土)、22日(日)は写真家・三部正博氏とパピエラボ・江藤公昭氏、在廊予定 
会場|BaBaBa 東京都新宿区下落合 2-5-15-1F 
時間|12時 – 19時 

BaBaBaでは写真家・三部正博氏と、「紙と紙にまつわること」をテーマに店、デザイン、印刷のディレクションなどを行うパピエラボによる展示『PRINT MATTERS 』 を開催いたします。

三部正博とパピエラボが数年に渡って共に取り組んでいるのが、三部が近年撮りためているランドスケープの写真を素材として、パピエラボが印刷物をデザイン、製作するプロジェクト。本展では、毎年ニューイヤーカードとして継続しているこの共作を発展させて、活版印刷、リソグラフ印刷、シルクスクリーン印刷による印刷物10点と、印刷物の素 材となった写真を含むクロモジェニックプリント10点を展示販売いたします。

日本国内で撮影されるランドスケープの連作を通して三部がとらえようとするのは、ありきたりな風景に潜む人間と自然の曖昧な境界の生々しさです。自然の中に垣間見る人為の跡や去った人間たちの残像。僅かな違和感を手掛かりに、両者の視点で連作をすべて見通し、像として写っているものと写っていないものの均衡を見極めながら、各印刷技術の特徴を踏まえて適した写真を厳選して、本展で発表する印刷物が製作されました。写真家としての立場から三部は、第三者であるパピエラボが自身の写真を印刷物に転換する過程で、単色での表現や紙の選択など、撮影者である自分が意図しない要素が加わることで、現像処理によって印画(PRINT)として可視化される写真とは異なるあり方が可能になることに興味があると言います。 両者がこのプロジェクトで目的とするのは、印刷のプロセス を経ることによって写真の見え方や在り様が変わる可能性、 また写真を素材にすることで印刷技術の潜在力を引き出せる可能性について、お互いの立場から考察することです。

写真が多くの場合に目的とする被写体の忠実な再現ではなく、 写真の諸要素を削ぎ落とし、被写体をあらわすのに不可欠な輪郭や色彩、質感、陰影のみを残してなお見える像を浮かび 上がらせる印刷物の面白みを追求しています。そうしたアプ ローチによって同時に、写真の中で像にはならずに漂っている気配を示すことができると考えています。内向的な欲求で 撮影された写真が「印刷」という手段によって解放され、紙という形態になることで展開が広がり得ることも、写真と印刷物の往来がもたらす産物だと期待します。

  • 写真: 三部正博
  • デザイン: 江藤公昭(PAPIER LABO.)

三部正博[Masahiro Sambe ]

写真家。1983 年、東京生まれ。泊昭雄氏に師事後、2006 年に独立。主に静物、 ポートレート、ファッションを被写体として、広告、雑誌、カタログなどの分野 で活動する。近年、ライフワークとしてランドスケープを撮り続けている。

http://3be.in/

パピエラボ[PAPIER LABO. ]

「紙と紙にまつわること」をテーマに 2007 年に開店。好みと縁を頼りに世界中 から集めるプロダクトやオリジナルプロダクトを取り扱う。印刷物やロゴなどの デザインや、活版印刷をはじめとした印刷、紙加工のディレクションも行う。

http://www.papierlabo.com/

ドラァグクイーンの読み聞かせで生まれる、
自分と向き合う時間。
Drag Queen Story Hour

アンダーグラウンドカルチャーの象徴でありながら、いまではマスメディアで大活躍のドラァグクイーン。なかでも、子どもたちのために絵本を読み聞かせるイベント「Drag Queen Story Hour」が密かに話題となっている。その活動が目指すものとは。

ある日曜日の午後、子供を対象に「ドラァグクイーンが絵本の読み聞かせをする」と聞いた。“ドラァグクイーン”と“読み聞かせ”という、どことなくミスマッチな感覚と、なにか思いがけないことが起こりそうな予感を胸に会場へと向かった。

カツッ、カツッ、カツッ。20名のほどの参加者が待つ部屋にハイヒールを響かせながら入ってきたのは、全身に鳥の羽を纏ったドラァグクイーン、レイチェル・ダムール。わぁと声を上げながら拍手をする大人に対し、子どもたちの反応は、口をつぐんでじっと見つめるもの、顔をそむけて大人にしがみつくもの、ゲラゲラと笑い出すものとさまざまだ。

しかし、ひとたび読み聞かせが始まると、子どもたちはぐっと絵本の世界に集中。ドラァグクイーンと子どもたちのあいだで、ごく自然な会話のやりとりも行われる。

ドラァグクイーン・ストーリー・アワーは、アメリカ・サンフランシスコで2015年スタート。日本では東京チャプターが、自分らしい生き方、多様な性のあり方などもテーマに、2018年から独自のプログラムを展開している。3~8歳をメインターゲットとして「誰もが知っている人気本」「ドラァグクイーン自身が読みたい本」「多様性をテーマにした本」を毎回3冊セレクトし、各所で読み聞かせを行っている。

一般的な「読み聞かせ」は、知育やしつけを目的としたところも多いが、このドラァグクイーン・ストーリー・アワーは、子どもたちだけでなく、保護者や運営側など、関係するすべての人間がそれぞれに思考を深めるきっかけにもなっているとプログラム担当者は語る。

「育児経験のないLGBTQの人々と児童教育を考えたり、日常から少し外れたところで子どもとの時間を過ごす。そんななかで、子どもも大人もみんなが『自分らしさ』について考えているような気がしています」

男らしさ、女らしさ、大人らしさ、子供らしさ。そのものにふさわしい様子を表す「~らしさ」という表現も、突き詰めていくと、ときにあるべき姿を示す強制の言葉につながってしまう。

「人よりちょっと派手なメークをして、大きな衣装を着ているけれど、私は好きな格好をしているだけなの」。読み聞かせを担当したドラァグクイーンのレイチェル・ダムールがそう自己紹介した言葉には、常識の範疇では語り尽くせない超越したように見えるものにも、自然で普通の状態があることを教えてくれる。

「ドラァグクイーンと子どものやりとりを見て、日頃自分がいかに子どもを子どもっぽく、大袈裟に扱っているかに気づきました。読み聞かせも子育ても、型を気にすることなく、もっと自由にやっていいんじゃないかなと今は思っています」

イベント終了後、保護者の一人が話してくれたコメントがとても印象的だった。



協力:景丘の家 https://kageoka.com

  • カバー写真: 水戸芸術館で開催した際の様子。撮影:矢野津々美
  • 文・本文写真: 猪飼尚司

オンラインとオフラインのあいだにあるもの。
BaBaBa Market

2月26日~27日に開催した「BaBaBa Market」。これまでウェブジャーナルで紹介したクリエイターの作品を一堂に集め、オンサイトで紹介するという試みで見えてきた「オン/オフの共存の可能性」とは。

 高田馬場にあるケーススタディスタジオと連動しながらも、一方で独立したメディアとしてBaBaBaウェブジャーナルでは独自に多様なタイプのクリエイターを取材してきた。春の気配を感じるうららかな週末に開催した「BaBaBa Market」には、これまでウェブジャーナルで紹介した7組の作品が集結した。

見慣れたモノのフォルムを抽象的に切り取りながら、木でさまざまなオブジェをつくる西本良太は、代表作であるアイスキャンディーやリンゴのほか、ダルマやクリスマスツリーを展示。ポップさのなかにオリジナル愛嬌を感じさせる有機的なフォルムの木製パーツを内部に埋め込んだ磁石で接続するオブジェと手掛ける嘉手納重広の作品は、その絶妙なバランスと自由な動きに人々の視線が集まる。

独特のタッチで幻想的な世界を描き出すフィンランド在住のテキスタイルデザイナーの星佐和子は、人気のモチーフをポストカードや手鏡といった身近なアイテムに写したプロダクトを展開。アーティストの飯川雄大は、人気のキャラクター「猫の小林さん」が描かれたバッジやステッカーが話題に。過去の展覧会用につくられた小作品は展示直後に売約済となる人気ぶりだった。

香りのアーティスト和泉侃は、パーソナルケアブランド「SOJYU」のほか、「wa/ter」のインセンスなどを紹介。さらにタイルの一大産地、岐阜県多治見で生産したタイルを一枚から販売するプロジェクト、TILE KIOSKには、著名デザイナーが手がけたタイルも並ぶ。タイルを単体で見ると発想も豊かになるようで、コースターやペン立ての代わりに使いたいと意見も聞こえた。

そして、クヌギの葉を折った作品「ORIHA」を展開するアーティスト、渡邊義紘。最近発刊したばかりの作品集とともに、ORIHAの作品20点を展示。作品が醸し出す豊かな表情と圧倒的な創作力に子供から大人までが釘付けになっていた。押し寿司のfuu fuu fuuと、生花のLANDも特別出展し、彩りを添えてくれた。

会場に2日間立って感じたこと。これまでジャーナルですべての作家に取材してきただけに、作品解説はお手のものと思っていたが、来場者が繰り出す率直な意見に驚いたり、戸惑ったりすることも。改めて疑問に感じ、作家にもう一度聞いてみなければなんてことも出てくる。

オンラインの情報は即効性があり、自由に出し入れしたり、入れ替えができて便利だが、対象者の反応が見えづらく、一方的な情報提示にもなりかねない。一方で、オフラインは、直接の交流で深い認識を生み出す一方、時間や場所の制約を受けるため、物事の順序やバランスを慎重に考える必要がある。

オンライン/オフライン両者のメリット、デメリットを把握した上で、互いの特性を生かしつつ、正しい温度感とタイミングで情報を作り、届ける。BaBaBaの活動はそんな可能性を秘めているのではないかと、改めて感じた2日間だった。

コト/モノ /ヒトを
染めに重ねる「金井工芸 分室」

奄美に伝承する染めの技を現代に受け継ぐ金井工芸。11月28日よりBaBaBaで始まる展覧会で、彼らが見せるものとは。

奄美群島の伝統工芸である伝統の大島紬の染めを長年担ってきた染色工房、金井工芸は、いまや伝統の世界に留まることなく、独自の実験を重ねながら多様なデザイナー、クリエイターと協業している。

金井工芸の色は、草木、水、菌、土など、すぐそばにある豊かな自然のエレメンツの力を借りながら、そこに人の知恵と技を複雑に重ね合わせ、独自の表現を創り出していく。金井工芸がフォーカスするのは、形を持たない色がどのように生まれ、対象に映すことでどのような表現が成立するのかというプロセス。単なる自然や伝統へと畏敬の念や完成品としての美しさだけでなく、そのすべての過程に介在するコト/モノ/ヒトの一連の流れが金井工芸の色のなかに存在しており、一つでもその要素が欠ければ、まったく違うものづくりの形になってくる。

本展では、金井工芸の金井志人がこれまでに手がけてきた制作物や実験内容を紹介しながら、その思考の組み立てやものづくりのプロセスを紹介。自然と呼応しながら制作を行う奄美大島の工房を再現したかのような「金井工芸 分室」がBaBaBaに誕生する。また、展示に合わせ、泥染めのワークショップや、持ち込みで染めをオーダーするサービス、奄美の本工房との中継など、さまざまなイベントも開催。普段は表に出ない金井工芸の全貌を明らかにしていく。

「金井工芸 分室」

会期=2021年11月28日[日]~12月12日[日]火休
時間=12時~19時(土日祝11時~18時) 
会場=BaBaBa (東京都新宿区下落合2-5-5-1F)

企画=金井志人 / 飯田将平 / 大脇千加子
出展協力=WONDER FULL LIFE / ミロコマチコ / LIGHT YEARS /
TIMBER CREW / KITTANAI / ON AIR / ONE KILN
展示構成=ido


|EVENT|泥染ワークショップ

■日時=2021年11月28日(日) 13時〜(※2時間ほどを予定しております。15時終了予定)

■募集人数=12名(※先着順)

■参加費=6,000円

■持ち物=染めたいもの1点(小さいものなら2点)

■注意事項=当日は汚れても良い服でお越しいただくか、着替えをご持参ください。

奄美に伝承する染めの技「泥染め」をはじめ豊かな自然から作る天然染色を現代に受け継ぐ金井工芸。11月28日(日)よりBaBaBaで始まる展覧会の初日イベントとして泥染のワークショップを開催します。

泥染めは奄美大島特有の染色方法で、島内に自生する「テーチ木(車輪梅)」という低木常緑樹を煮出して作った染料で染めた後に、泥田 に浸す作業を繰り返すことを言います。「テーチ木」に含まれるタンニン色素と奄美大島の泥に含まれる鉄分の化学反応を利用した染色方法 で、奄美の自然が作る色と言われてます。

今回のワークショップでは、奄美大島から染料をお持ちいただき、BaBaBa内とエントランス付近を使用して泥染めを行います。金井工芸・金井志人さんとの会話を楽しみながら形を持たない色がどの ように生まれ、対象に映すことでどのような表現が成立するのかというプロセスを一緒に体験していただけたらと思います。

ご予約のお申し込みは11/20(土)12:00からメールにてお承りいたします。下記詳細をご覧くださいませ。

 

〜ご予約方法〜

下記メールアドレスまで下記情報をご明記の上、お申し込みくださいませ。

info@bababa.jp

件名『BaBaBa 金井工芸・泥染め 参加申し込み』

①お名前 ②電話番号 ③参加者人数をご明記ください。

・11/20(土)12:00からお申し込みを承ります。先着順で定員に達し次第終了とさせていただきますのでご了承くださいませ。

・参加者が複数名いる場合は代表者様のご情報のみご明記お願いいたします。

・ご予約内容確認のため、以下の番号よりお電話させていただく場合がございます。

電話:03-6363-6803

※お申し込み後のキャンセルはご遠慮くださいますようお願い申し上げます。

|EVENT|染めスタンド

■期間=会期中会場内にて随時受付

■人数=20名(※先着順・1人1点まで)

■料金=5000円~1万円程度(色目によって金額は変動)

持ち込みいただいたアイテムをお預かりして染めを行うサービス”染めスタンド”。
染めサンプルを見て相談をしながら好きな染色方法をお選びいただけます。
お預かりしたものは一度、奄美大島・金井工芸に持ち帰られ、染色を行います。
仕上がりは20221月中を予定しており、順次ご自宅に発送させていただきます。

|EVENT|奄美工房とのライブ中継

■時間=毎日1317時(日曜は工房休みのため録画対応)

■中継予定場所=窯の焚き場 / 泥田 / 作業場 / 干場等

(※天気、状況に応じてスイッチ中継を行います)

会期中、奄美の本工房とBaBaBaをバーチャルで繋げます。
自然と呼応しながら制作を行う奄美大島の工房のリアルを是非ご体感ください。
また日々、中継ポイントが異なりますので現場のライブ感もお楽しみいただければと思います。

木工の意識が変わる、次世代デジファブ。

10月9日から、新しい展覧会「EMARFでつくる新しい生業─自分を解放するものづくり」がBaBaBaでスタートする。そもそも「EMARF」とは何なのか? 企画チームであるVUILDのアトリエを訪ねた。

 自分がいる環境をぐるり見まわすと、建築、家具、日用品にいたるまで、木でできたものが想像以上に多いことに改めて気づく。しかし、多くの人はその製品が、どのような過程を経てできたものか知らないのではないだろうか。

「日本には、古くから大工や指物など、精度の高い木工文化が伝わっていることも影響してか、木工は難しくて、ハードルが高いという意識が強い。そのため、デザイナーや建築家でも製造のことは現場任せで、方法論を知る人はあまりいません。こうした状況のなかで、僕たちは、デジタルテクノロジーの力をもって、こうした“ものづくりの壁”をどんどん壊していけないかと考えているのです」

そう語るのは本展を担当であるVUILD・EMARFチームのデザイナー、戸倉一(はじめ)さん。2017年に創業したVUILDは、デジタルツールを用いたデザイン・設計と、製造の現場をシームレスにつなぐプロジェクトを軸に活動を続けている建築スタートアップだ。

「製材工場や家具製造の現場では、『CNCミリングマシン』と呼ばれるコンピュータ制御で工作を行う機械が使われていますが、とても高額で、操作も煩雑なため、その利用・操作は一部の専門家に限られています。僕たちは、廉価な『ShopBot』というアメリカ製のCNCと一般的なデザインアプリケーションを連動させることで、『ネット印刷』のような感覚で、デザインに携わる誰しもが簡単に木のものづくりと触れ合えるようにしたいと考えているのです」

このオンラインで簡単にオーダーできる木のものづくりのクラウドサービスこそが「EMARF」だ。操作は明解で、ネット印刷や3Dプリンターなどのアプローチにも似ている。

「高度な工芸」or「単純なDIY」。二極に分断していた木工の世界にEMARFのようなサービスが登場することで、さまざまなタイプのクリエイターが参加し、これまで想像できなかったようなクリエイティブの可能性がどんどん生まれていくだろう。展覧会タイトルにある「新しい生業(なりわい)」とは、プロ/アマを問わず、発想さえあれば方法論を知らずとも形づくることができるという、新しいデザインアプローチのメタファーでもある。まずは、「この形を木でつくってみたいな」というアイデアを持って、展覧会場を気軽に訪れてみてほしい。

  • Text: Hisashi Ikai
  • Photo: Hayato Kurobe

VUILD

秋吉浩気が2017年に創業。デジタルファブリケーション&エンジニアリング、ソーシャルデザインを掛け合わせることで、分化している木工、木造建築、設計、製材などの垣根を取り払い、より広いものづくりの可能性を模索している。SHOPBOTの国内販売とEMARFの企画・運営も行う。

https://vuild.co.jp

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