島とともに生きる素直な宿。
──梅木屋

国生みの島としての歴史文化に加え、豊かな自然と食に恵まれた淡路島に、ちょうど良い心地よさを感じされる宿「梅木屋」はある。

淡路島中部西岸の五色町都志にある宿、梅木屋。2012年、東京からこの島に移住した北川太一郎さんが、妻の文乃さんとともに運営している個室が5つだけの小さな宿だ。

「僕は宿屋をやるつもりで淡路島に来ましたが、はじめは知り合いもいないし、土地の知識もありません。ここで農業に従事しながら、人々と交流していくなかで島のことを徐々に理解し、淡路島、そして自分にとってほど良いかたちの宿はなんだろうとゆっくり考えていきました」

元旅館を借り受け、梅木屋を始めたのは、北川さんが移住して7年後の2019年末。準備には時間を有したものの、その間に得たネットワークでリノベーションは有志とともに自分たちで行ったという。

島特有の豊かな食文化が島内の各所で楽しめ、温泉施設も豊富なことから、梅木屋の宿泊は素泊まりが基本。地元に根付いた生きた情報を梅木屋で聞きながら、島の時間を満喫。地元食材を購入して自炊したい人には、北川さんたちが使う大きなキッチンを共有してくれ、必要とあらば、料理上手な文乃さんが調理のサポートもしてくれる。

「もっといろんなサービスがここで提供できればとも思いますが、何しろ従業員は僕たち2人だけ。満足していただける内容をこなすには限界もありますから、そこは島の力を最大限に借りています。各所でお客さんが『梅木屋で聞いてきた』とおっしゃってくれるので、島の人たちとのコミュニケーションも密に。僕たちだけでなく、ここを訪れる方、迎え入れる人々、すべてが一緒になって状況をつくっているような気がしています」

近年、淡路島北部では開発も進み、さまざまな新しい施設が誕生しているが、梅木屋がある中部以南のエリアには、豊かな田園が広がり、ゆったりとした時間が流れる。

「観光が発展して宿が大きくなることよりも、どこか完成されていない隙間のようなものがあって、それを人と人の心地よいつながりで補っていければそれで良い。僕たちの子どもは、この島で生まれて、今年で4歳。僕たちがここで楽しく働いている姿を見ていれば、彼が大人になったときに『ここで育ってよかった』と思ってくれるはず。それが梅木屋にとっても、淡路島にとっても、幸せなかたちなんじゃないでしょうか」

この宿の魅力のもとは、北川さんたちの朗らかさと素直さ。自分たちの成長と日々の変化に合わせ、無理のない普遍的な時間が流れているからこそ、梅木屋はほど良い居心地の良さがあるのだろう。

心の通う場のつくり方。
──倉敷国際ホテル

目まぐるしく変化する観光ビジネスのなかで、開館当初の姿のまま、しかし決して古びることなく佇む岡山の倉敷国際ホテル。建築、しつらえ、もてなしの裏にある創業の理念とは。

運河沿いに白壁の蔵屋敷が並ぶ倉敷美観地区。最大の観光名所でもある大原美術館の真裏にある倉敷国際ホテルが完成したのは、1963年のこと。半世紀以上前に完成した施設ながら、倉敷らしい上品で洗練され空気と温もりのある居心地の良さで、変わらず愛され、リピーターが多いホテルとしても知られている。

このホテルの創業者は、倉敷のまちづくりに大きく貢献した大原孫三郎の長男、聰一郎。「倉敷にふさわしい近代的な都市型宿泊施設」を建設するにあたり相談をもちかけたのが、同じ年に生まれ、自身が経営する倉敷レーヨン(現在のクラレ)で関連施設の多くの設計を担当していた建築家の浦辺鎮太郎だった。

浦辺が總一郎と初代支配人の有森照彦とともに思考を巡らせたのは、いかに倉敷の美しい街並みに自然に溶け込む近代的なホテルのあり方だった。これを実現させるために、浦辺は街に対して圧迫感を与えないように、建物のファサード中央部を奥にセットバックしたコの字形に決定。さらに、外壁に微妙に角度をもたせながら淡いツートーンに塗り分けることで、周りを囲む白壁+瓦屋根の屋敷との相性の良い外観を完成させた。

館内各所に置かれたアートや工芸の数々も、来館者の気持ちを高揚させつつ、落ち着いた雰囲気をつくりだすための重要なファクターとなっている。ロビーから上階に空間が広がる吹き抜けには、總一郎の旧知の仲であり、世界に名を轟かせる版画家、棟方志功の作品『大世界の柵〈坤〉─人類より神々へ』をシンボリックに展示。舩木研兒・伸児(けんじ・しんじ)親子による陶板のほか、陶芸、織物といった工芸作品、床や壁のタイルにも趣向を凝ったあしらいを施している。

そして、何よりもこのホテル特有の居心地の良さは、ホテルスタッフの自然なもてなしの態度にある。これは大原總一郎が創業に向けて残した以下の文章が、今もホテルスタッフの心の拠りどころとなっているからだという。

「私は質素で健全で実質的で心の通ひ感情のこもった宿が望ましいと思う。卑屈なサービスで凡人を王様扱いにて甘心を求める様な宿は精神的に不潔で面白くない。便利で住み良いと言う事は心理摩擦がないという事であって、理屈に合はないサービスの過剰は却って心の重荷となる」(1953年、計画書『”An Inn with Pub” project at Kuranshiki』に寄せられた一文を原文のまま記載)

ホテルに訪れる人は、「特別な旅人」ではなく「大切な住人」。おだやかに、豊かに過ごす時間と空間を純粋に追求してきたからこそ、このホテルを訪れた誰しもが快く受け入れられたように感じるのかもしれない。

クヌギの葉から生まれる小さな世界。
渡邊義紘作品集『ORIHA』

熊本で“折り葉”を手がける渡邊義紘。アールブリュットを超えた、生命の表現が一冊の本にまとまった。

クヌギの葉を折りながらゾウ、トラ、ヒツジ、キリン、サルといったさまざまな生き物を表現する、折り葉アーティストの渡邊義紘。長さ10~15cmほどの細長く、葉先がギザギザしている自然のクヌギの葉はどれも不均一な形をしている。さらに扱うのは落ち葉なので乾燥の具合によって質感もそれぞれに異なる。そんな個性的なクヌギの葉でも、渡邊は手にするとわずか10分ほどで折り上げてしまうという。

幼少期に自閉症と診断される一方で、大好きな生き物たちの姿を切り絵や折り葉に映してきた渡邊。驚異的な造形力で13歳より作品を発表しはじめ、2018年以降は年数回のペースで展覧会に参加するなど、作家としてコンスタントに活動している。

渡邊の作品は緻密で繊細な手技に注目が集まりがちだが、それにもまして際立つのが、作品が放つ生命の躍動だ。同じ生き物を手がけたときにポーズが異なるのは当然で、ときに首ももたげて雄叫びをあげているようなものや、尻尾を高く振り上げていまにも駆け出しそうな姿勢を取っているものもいる。

これまで展示会で発表するにとどまっていた作品群をもっと広く見てもらおうと、作家の母の渡邊仁子が発起人となり、写真家·白木世志一が作品を撮り下ろし。作家のポートレイトや日常を織り交ぜながら作品集『ORIHA 渡邊義紘作品集』としてまとめた。

この作品集は、2021年12月23日より発売開始。美術評論家で東京藝術大学名誉教授を務める秋元雄史が序文を担当している。

  • Text: Hisashi Ikai
  • Photo: Yoshikazu Shiraki

渡邊義紘作品集『ORIHA』

80ページ 2,200

ISBN978-4-908313-80-6 C0072

発行:渡邊仁子

写真:白木世志一

文:坂本顕子

デザイン:内田直家

発売元:熊日出版

096-361-3274

https://www.kumanichi-sv.co.jp/books/zs

記憶と繋がり、感覚をふるわせる。
香りという言語。

淡路島を拠点に、アーティストとして活動する和泉侃(いずみかん)。環境と対話しながら、香りの世界を探求し続けるそのエネルギーの源とは。淡路のアトリエを訪ねた。

香水に限らず、ルームフレグランスからコスメに至るまで、香りにまつわる製品は次々に生み出されているが、和泉侃が作り出す世界観は、世間でいうところの「良い香り」とは、少し違う領域にあるように感じる。

「香りは相対的な感覚ではなく、あくまでも個々人の経験や記憶にすべて関連づけられるもの。単にいい匂いと感じて心地よくなるだけでなく、ある匂いをかいだ瞬間に別の記憶が蘇ってきたり、これまでに感じたことのないような感覚が出てきたりする。香りは身体感覚を研ぎ澄ませ、動物的な本能を蘇らせる鍵と言えるかもしれません」

調香師ではなくアーティストであると和泉が自認しているのは、このように香りが「感覚の蘇生」と直結していると信じているからだ。汗の匂いや蒸れたへそ、ピアスの穴の膿など、決して一般的には良い匂いのジャンルには属さずとも、人の心をくすぐり、繰り返し嗅いでしまうものもある。どんな匂いがどのように人に影響を与えるのか。何を原料にどのように調合していけば、その匂いに到達するのか。飽くなき好奇心を満足させるためには、自ら原料を探し、それらを生成できる環境に身を置かなければならない。生まれ育った東京を離れ、淡路島へと移ったのはそのためだ。

淡路の自然を見渡す小高い丘の上にある和泉のアトリエ「胚」。内装をデザイナーの柳原照弘が担当。Photo_ Yagi Yuna

「平安期の淡路は、朝廷に食料を納める御食国(みけつくに)の一つであり、現在でも食材の自給率はほぼ100%。この背景には、気候的特徴に豊かな植生があると思うんです。これまで僕が扱ったことのない素材を、とても新鮮な状態で手に入れられるので、ここにいれば一生勉強できる気がするんです」

とはいえ、和泉はいつもラボのなかに閉じこもって、研究ばかりをしているわけではない。全国を飛び回り、さまざまな店舗やイベントのためにシグニチャーの香りを開発、提案も積極的に行っている。

「企業や空間のために香りをつくるのは、ロゴデザインの感覚に似ているかもしれません。ロゴが企業の顔となり、その製品やサービスを思い出すように、記憶と直結する香りは、目に見えずとも力強いブランディングの要素なのです。単に香りの開発だけでなく、どのような瞬間、段階で、どれほどの香りを伝えるかも重要なので、空間の設計や匂いの拡散方法、空調のあり方など細かく考えていきます」

若手ながら着実にキャリアを重ねている和泉侃だが、これからの自身のあり方をどのように見据えているのだろう。

「人の身体感覚には無限の可能性があると信じているので、ゴールがどこにあるのかは分かりません。今は、年間300種以上の素材と取り組みながら、それらから得たものをどのように世に残し得ていけるのかを考えています。この地にいる限りは、新しいことが連続して起こる予感がしているので、経験を重ねていくだけです」

淡路が日本のグラース(フランスの香水の産地)のようになる夢を描きながら、和泉侃はこれからも香りを通じて、次なる感覚の蘇生を探求し続ける。

アトリエの土壁の原料には、淡路の植物と原土を混ぜたものを使用。空間にも独自の思想を散りばめている。Photo_ junpei iwamoto

  • Text: Hisashi Ikai

和泉 侃[Kan Izumi]

1991年東京都生まれ。2011年頃より、企業内で店舗やホテルなどのために香りを設計するプロジェクトに携わり、2015年作家として独立。インスタレーション、空間や製品の香りのデザイン、ディレクションを行う。2017年淡路島に移住。島の植生を研究しながら、独自に原料製造から、調香、製品づくりを行う。代表的な仕事にリーガロイヤルホテル(大阪)、誉田屋源兵衛、sunao(京都)など。

https://izumikan.jp

鈴⽊元が考える、美しさの定義。

次々に⽣まれるデザイン提案から、⼈々はどのように美意識を持ち、価値を感じ取っているのか。美の定義について、プロダクトデザイナーの鈴⽊元と考えてみた。

「特別な季節の⾏事や祭りごとなどを⽰すハレ、普段のあたりまえの状態を⽰すケ。⽇本の伝統的な世界観を表すこの『ハレとケ』に例えるならば、以前のデザインはハレの感覚を求めていたのに対し、いまは⽇常の背景を整えていくようなケの要素が強く求められているのではないでしょうか」

プロダクトデザイナーとして国内外の企業と数多くのプロジェクトを⾏なっている鈴⽊元だが、裏⽅的な⽴ち位置からものづくりに携わっていることが多い。

「外部デザイナーとしてメーカーと協業する意味は、特徴的な形を提供することではなく、あくまでも素直でフラットな感覚からそのモノの存在を⾒極めるため。デザインとは、作り手として様々な制約を引き受けながら、使い手の普通の感覚を持ち続けること。⽣活のなかに取り⼊れたときに⾃然な存在であるように、プロダクトだけにフォーカスしてデザインを考えるのではなく、敢えて視界の端の⽅に追いやり、全体をぼんやりと⾒つめている感覚に近いかもしれません」

昔から派⼿なこと、都会的なデザインよりも、柳宗理の活動に影響を受け、⽣活に根ざした地道なものづくりに従事するデザイナーになりたいと考えていたという。

「⼦供時代は、⼩⽯や⾙殻を集めるのが⼤好きで、河原や浜辺にでかけると何時間でもひたすら探していました。この頃から、なにかしら定義しきれない美しいものが好きだったように思います。美しさとは、見過ごしてしまうくらい自然なもの。そういったものの⽅が⾵景に馴染んで邪魔にならず、⻑年時間を共にすることができる。デザインも同様。トレンドに沿って変化を繰り返すのではなく、もっと⼈や環境との調和を⼤切に考えるべきものだと思うんです」

決してハレの気配を感じさせる特別なものを否定するものではないが、静かな日常こそを美しく底光りするものにしたい。そんな思いとともに、鈴⽊元はこれからの、暮らしの背景になるものを作り出していくのだろう。

  • Text : Hisashi Ikai
  • Photo: Gottingham

鈴⽊元[Gen Suzuki]

1975年⽣まれ。プロダクトデザイナー。⾦沢美術⼯芸⼤学卒業後、パナソニックを経て、イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに進む。IDEOロンドン、ボストンを経て、2014GEN SUZUKI STUDIO設⽴。Herman MillerCasper、オムロンをはじめとした国内外の企業と協働。多摩美術⼤学、武蔵野美術⼤学で教鞭を執るほか、D&AD賞審査員も務める。

https://www.gensuzuki.jp

6泊7日の列車旅が生むもの。
『Trans-Siberian Railway』本多康司&吉田昌平

ウラジオストクからロシアまで全長9,297kmをシベリア鉄道で旅した写真家の本多康司とアートディレクターの吉田昌平。車内で過ごした6泊7日を、それぞれが独自のクリエーションにまとめた。

飲みの席で交わした「シベリア鉄道に、一度乗ってみたいよね」という些細な会話。通常ならばその場限りで忘れてしまいそうなトピックだが、写真家の本多康司とアートディレクターの吉田昌平の2人のあいだでは、なぜか現実のものとなり、すぐに出発の準備を始めてしまった。

この会話から半年経った2019年の冬。2人は世界一の距離を走るシベリア鉄道に乗り込んだ。とにかく西に移動し続けることを目指し、特に車内で何をするのかは決めていなかったというが、唯一約束したのは一度出発したら、絶対に途中下車はしないこと。

「車内は狭くて窮屈ですし、お風呂もありません。ちょうど中間地点にバイカル湖などの観光地もありますから多くの人は途中下車してしまうんです。でも、僕たちは同じ車内に1週間居続けたらどうなるだろうという方に興味を持ってしまった」

2段ベッドが2つ入る個室は4名でシェア。車内にはネット環境がないので通信サービスを楽しむことはできず、移動は細長い通路と食堂車を行ったり来たりするくらいが限界。人によっては退屈で息が詰まりそうな環境だが、2人は旅のなかでこの状況を格好のクリエーションに転化していった。

写真家の本多は、日が昇るとすぐにカメラを持って通路に出て、日が暮れるまで車窓に映るさまざまな景色を撮影し続ける。

「列車は前に進み続けるものの、僕自身はほとんど動きが取れない。普段ならば自分が積極的に動いてフォーカスを捉えようとしますが、シベリア鉄道では寄りも引きもできない景色がものすごいスピードで目の前を過ぎていく。いつもとまったく異なる環境下で、動く景色の一瞬を捉えることはとても新鮮でした」

西に向かう列車の後方から太陽が現れ、まるで自分を追い越すかのように西の果てへ消えていく太陽や1日の光の移り変わりは、どこにでもある自然の摂理ながら、何日も繰り返し眺めていると、何者にも左右されない不思議な力強さすら感じたという。

一方で、吉田は当初客車のベッドにまどろみながら、本を読んだり昼寝をしたりというのんびりした時間を過ごしていたが、乗車前のウラジオストクやシベリア鉄道の車内で手に入れたレシートやチケット、紙片などを素材に、コラージュ作品をつくりはじめた。

「コラージュは昔から行っているのですが、今回の旅では自分で自由に素材を選べず、たまたま乗り合わせた乗客から譲ってもらうなど、人の親切に頼る部分もありましたし、小さなベッドの上での作業はいつもよりもラフで緻密さに欠けます。ですが、そこでしか醸し出せない現場の空気感が作品に見え隠れして面白いんです」

環境がつくり出す一定の制限・制御のなかで、いかに自身の感覚や感受性を素直に写すことができるかに挑んだ本多康司と吉田昌平。列車のなかでの創作をもとに、帰国後2人は個展を開催し、作品集も手がけた。

「今回の作品では、プリントの余白部分を多めに取り、列車内の限られた空間や車窓がフレームように見える様子を表現しています」

そう語る本多に続き、吉田もこの旅で感じ取った新たな創作の感触をこのように話す。

「自分にとってデザインの仕事は一定の縛りがあるなかでこなし、コラージュ作品は自由に任せていたところもありましたが、今回の創作はまさにその中間を行くような感覚。意図せずとも自然に導かれていく魅力的なものに気づいた気がします」

本作品は、2021年5月10日~29日まで、東京・渋谷のギャラリー(PLACE) by method にて『Trans-Siberian Railway』展で発表。
同時に作品集も発売した。

  • Text: Hisashi Ikai

本多康司[ほんだこうじ]

1979年愛知県生まれ、兵庫県育ち。熊本大学工学部を卒業。長野博文、泊昭雄に師事した後、2009年に独立。雑誌、広告などで活動をしながら、積極的に写真展を開催。作品集として『suomi』(2013年)『madori』(2017年)を発表している。

http://honda-koji.com

吉田昌平[よしだしょうへい]

1985年広島県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。ナカムラグラフを経て、2016年「白い立体」を設立。雑誌や書籍、展覧会ビジュアルを手がけるほか、アーティストとしてコラージュ作品を制作する。主な作品集に『KASABUTA』『ShinjukuCollage)』など。

http://www.shiroi-rittai.com

コト/モノ /ヒトを
染めに重ねる「金井工芸 分室」

奄美に伝承する染めの技を現代に受け継ぐ金井工芸。11月28日よりBaBaBaで始まる展覧会で、彼らが見せるものとは。

奄美群島の伝統工芸である伝統の大島紬の染めを長年担ってきた染色工房、金井工芸は、いまや伝統の世界に留まることなく、独自の実験を重ねながら多様なデザイナー、クリエイターと協業している。

金井工芸の色は、草木、水、菌、土など、すぐそばにある豊かな自然のエレメンツの力を借りながら、そこに人の知恵と技を複雑に重ね合わせ、独自の表現を創り出していく。金井工芸がフォーカスするのは、形を持たない色がどのように生まれ、対象に映すことでどのような表現が成立するのかというプロセス。単なる自然や伝統へと畏敬の念や完成品としての美しさだけでなく、そのすべての過程に介在するコト/モノ/ヒトの一連の流れが金井工芸の色のなかに存在しており、一つでもその要素が欠ければ、まったく違うものづくりの形になってくる。

本展では、金井工芸の金井志人がこれまでに手がけてきた制作物や実験内容を紹介しながら、その思考の組み立てやものづくりのプロセスを紹介。自然と呼応しながら制作を行う奄美大島の工房を再現したかのような「金井工芸 分室」がBaBaBaに誕生する。また、展示に合わせ、泥染めのワークショップや、持ち込みで染めをオーダーするサービス、奄美の本工房との中継など、さまざまなイベントも開催。普段は表に出ない金井工芸の全貌を明らかにしていく。

「金井工芸 分室」

会期=2021年11月28日[日]~12月12日[日]火休
時間=12時~19時(土日祝11時~18時) 
会場=BaBaBa (東京都新宿区下落合2-5-5-1F)

企画=金井志人 / 飯田将平 / 大脇千加子
出展協力=WONDER FULL LIFE / ミロコマチコ / LIGHT YEARS /
TIMBER CREW / KITTANAI / ON AIR / ONE KILN
展示構成=ido


|EVENT|泥染ワークショップ

■日時=2021年11月28日(日) 13時〜(※2時間ほどを予定しております。15時終了予定)

■募集人数=12名(※先着順)

■参加費=6,000円

■持ち物=染めたいもの1点(小さいものなら2点)

■注意事項=当日は汚れても良い服でお越しいただくか、着替えをご持参ください。

奄美に伝承する染めの技「泥染め」をはじめ豊かな自然から作る天然染色を現代に受け継ぐ金井工芸。11月28日(日)よりBaBaBaで始まる展覧会の初日イベントとして泥染のワークショップを開催します。

泥染めは奄美大島特有の染色方法で、島内に自生する「テーチ木(車輪梅)」という低木常緑樹を煮出して作った染料で染めた後に、泥田 に浸す作業を繰り返すことを言います。「テーチ木」に含まれるタンニン色素と奄美大島の泥に含まれる鉄分の化学反応を利用した染色方法 で、奄美の自然が作る色と言われてます。

今回のワークショップでは、奄美大島から染料をお持ちいただき、BaBaBa内とエントランス付近を使用して泥染めを行います。金井工芸・金井志人さんとの会話を楽しみながら形を持たない色がどの ように生まれ、対象に映すことでどのような表現が成立するのかというプロセスを一緒に体験していただけたらと思います。

ご予約のお申し込みは11/20(土)12:00からメールにてお承りいたします。下記詳細をご覧くださいませ。

 

〜ご予約方法〜

下記メールアドレスまで下記情報をご明記の上、お申し込みくださいませ。

info@bababa.jp

件名『BaBaBa 金井工芸・泥染め 参加申し込み』

①お名前 ②電話番号 ③参加者人数をご明記ください。

・11/20(土)12:00からお申し込みを承ります。先着順で定員に達し次第終了とさせていただきますのでご了承くださいませ。

・参加者が複数名いる場合は代表者様のご情報のみご明記お願いいたします。

・ご予約内容確認のため、以下の番号よりお電話させていただく場合がございます。

電話:03-6363-6803

※お申し込み後のキャンセルはご遠慮くださいますようお願い申し上げます。

|EVENT|染めスタンド

■期間=会期中会場内にて随時受付

■人数=20名(※先着順・1人1点まで)

■料金=5000円~1万円程度(色目によって金額は変動)

持ち込みいただいたアイテムをお預かりして染めを行うサービス”染めスタンド”。
染めサンプルを見て相談をしながら好きな染色方法をお選びいただけます。
お預かりしたものは一度、奄美大島・金井工芸に持ち帰られ、染色を行います。
仕上がりは20221月中を予定しており、順次ご自宅に発送させていただきます。

|EVENT|奄美工房とのライブ中継

■時間=毎日1317時(日曜は工房休みのため録画対応)

■中継予定場所=窯の焚き場 / 泥田 / 作業場 / 干場等

(※天気、状況に応じてスイッチ中継を行います)

会期中、奄美の本工房とBaBaBaをバーチャルで繋げます。
自然と呼応しながら制作を行う奄美大島の工房のリアルを是非ご体感ください。
また日々、中継ポイントが異なりますので現場のライブ感もお楽しみいただければと思います。

色で世界が広がる。
SPREADの個展がスタート。

色彩表現を巧みに引用しながら、新たなクリエーションを手がけるSPREADが待望の個展が東京・青山のスパイラル・ガーデンではじまった。

2020年初頭からの蔓延したパンデミックは、世界を陰鬱なムードに包み込んだ。さまざまに制御、制限がかかるなか、クリエイティユニットのSPREAD(スプレッド)も、昨春に予定していた個展の開催延期を余儀なくされた。

「目に見えない大きなものが迫ってきて、肩に重くのしかかる。自ら行動を起こさなければ、どこかに押し流されてしまう気がした」

そう語る彼らは、待機が続くなかでも意欲的に創作を継続。半年遅れての開催となった展覧会『SPREAD by SPREAD 明日は何色?』がいまスパイラルガーデンで開催されている。

スペースの特性を存分に生かしながら、大胆な手法で鮮やかな色の世界を表現しているSPREAD。独創的な発想とともに注目したいのはそれぞれの作品に使っている素材だ。活版印刷の紙片、工業用メッシュ、アルミパネルなど、どれも身近な存在ながら、意識的には見ることのないものばかり。普遍的な素材が鮮やかな色をまとった瞬間に、人々の意識を瞬時に捉え、思考と感覚を刺激する存在へと変化していく。

既存の概念を解き放ち、新しい目線で世の中を見る。そんなきっかけにもなりそうな、自由で清々しい空気感に包まれた展示だ。

  • Text: Hisashi Ikai

『SPREAD by SPREAD 明日は何色?』

20211027日~117()

11:0020:00 無休 入場無料

会場:Spiral Garden 

東京都港区南青山 5-6-23スパイラル1F 

https://www.spiral.co.jp

SPREAD[スプレッド]

東京を拠点に活動する山田春奈と小林弘和によるクリエイティブユニット。生活の記録をストライプ模様で示す作品「Life Stripe」を2004年から発表。以降、国内外で定期的に個展を開催する。主なプロジェクトに「燕三条 工場の祭典」「HARU stuck-on design;」「Dance Base Yokohama」など。

https://spread-web.jp

木工の意識が変わる、次世代デジファブ。

10月9日から、新しい展覧会「EMARFでつくる新しい生業─自分を解放するものづくり」がBaBaBaでスタートする。そもそも「EMARF」とは何なのか? 企画チームであるVUILDのアトリエを訪ねた。

 自分がいる環境をぐるり見まわすと、建築、家具、日用品にいたるまで、木でできたものが想像以上に多いことに改めて気づく。しかし、多くの人はその製品が、どのような過程を経てできたものか知らないのではないだろうか。

「日本には、古くから大工や指物など、精度の高い木工文化が伝わっていることも影響してか、木工は難しくて、ハードルが高いという意識が強い。そのため、デザイナーや建築家でも製造のことは現場任せで、方法論を知る人はあまりいません。こうした状況のなかで、僕たちは、デジタルテクノロジーの力をもって、こうした“ものづくりの壁”をどんどん壊していけないかと考えているのです」

そう語るのは本展を担当であるVUILD・EMARFチームのデザイナー、戸倉一(はじめ)さん。2017年に創業したVUILDは、デジタルツールを用いたデザイン・設計と、製造の現場をシームレスにつなぐプロジェクトを軸に活動を続けている建築スタートアップだ。

「製材工場や家具製造の現場では、『CNCミリングマシン』と呼ばれるコンピュータ制御で工作を行う機械が使われていますが、とても高額で、操作も煩雑なため、その利用・操作は一部の専門家に限られています。僕たちは、廉価な『ShopBot』というアメリカ製のCNCと一般的なデザインアプリケーションを連動させることで、『ネット印刷』のような感覚で、デザインに携わる誰しもが簡単に木のものづくりと触れ合えるようにしたいと考えているのです」

このオンラインで簡単にオーダーできる木のものづくりのクラウドサービスこそが「EMARF」だ。操作は明解で、ネット印刷や3Dプリンターなどのアプローチにも似ている。

「高度な工芸」or「単純なDIY」。二極に分断していた木工の世界にEMARFのようなサービスが登場することで、さまざまなタイプのクリエイターが参加し、これまで想像できなかったようなクリエイティブの可能性がどんどん生まれていくだろう。展覧会タイトルにある「新しい生業(なりわい)」とは、プロ/アマを問わず、発想さえあれば方法論を知らずとも形づくることができるという、新しいデザインアプローチのメタファーでもある。まずは、「この形を木でつくってみたいな」というアイデアを持って、展覧会場を気軽に訪れてみてほしい。

  • Text: Hisashi Ikai
  • Photo: Hayato Kurobe

VUILD

秋吉浩気が2017年に創業。デジタルファブリケーション&エンジニアリング、ソーシャルデザインを掛け合わせることで、分化している木工、木造建築、設計、製材などの垣根を取り払い、より広いものづくりの可能性を模索している。SHOPBOTの国内販売とEMARFの企画・運営も行う。

https://vuild.co.jp

「迷い、見つけ、近づく」。
酒井駒子展のつくりかた。

東京・立川のPLAY! MUSUEMで開催中の「みみをすますように 酒井駒子」展。京都在住のフランスの建築家デュオ、2m26が考えた、独自の展示デザインとは。

『よるくま』『金曜日の砂糖ちゃん』などで知られる絵本作家の酒井駒子が、初となる本格的な個展「みみをすますように 酒井駒子」を開催。およそ250点の原画を展示する会場には大小さまざな形をした木の塊のなかに絵が隠れていたり、黒い小屋のなかに入って絵の世界に没入するなど、ユニークな仕掛けが多数用意されている。

会場デザインを担当したのは、フランス出身で、京都で活動する建築家ユニット、2m26。

「酒井さんのアートワークは、美しい筆のタッチが表すマチエールと絵のなかにぐっと引きこまれる緊張感が特徴的。絵本を読むと、まるで大人に向かって話しかけているようにさえ感じる。この感覚を会場でそのままに表現してみようと思ったのです」

彼らがもっとも尊重したのは、作品と鑑賞者の距離感。タワー状の展示台は形も大きさもランダムにして、いろいろな角度、高さから鑑賞の鑑賞を促す一方で、渦巻状になっている会場の特性を利用して、曲面の壁は、一定の高さにフレームを展示した。

「来場は、会場を移動するたびに、酒井さんの絵を違う角度から見えるようにと、敢えて順路は設けませんでした。最初は森の中を彷徨っているような感覚を覚えるかもしれませんが、次第に慣れていくと、自分で一番心地よいと思える景色のところで時間を過ごすようになる。鑑賞者の積極性が自然と生まれるような空間を目指しました」

会場の什器やフレームはすべて木製だが、サイズや仕様は統一せず、会場を進むと支持体にもさまざまな見栄がかりがあることに気づく。いくつかの展示台は、大人には少し小さく、子供にはちょっと大きいという、不思議なサイズ感のモジュールで展開している。これも2m26が意図的にデザインしたもので、定型と不定形、整頓と不均一の中間域にあるものを模索することで、酒井駒子の作品をよく知るものでも、改めて新鮮な視点から鑑賞ができるようにしているという。

「素材に木を用いたのは、まるで手品のように、同じ部材からいろんな形や仕掛けをつくることができるから。木は廉価で頑丈な上に、解体&再生も繰り返しできるので、移動やシステムの組み替えにも最適。巡回することを前提に企画されている本展のセッティングとしては、それ以外の素材は考えられませんでした」

シンプルな素材、合理的な機能の掛け合わせでも、視点を違えることで新たな可能性が現れることを改めて学んだと語る2m26。彼らが日本を拠点に活動を続けるのも、同じ理由からかもしれない。

「フランスでは椅子に座った生活が基本であるのに対し、日本では椅子にも、床にも座ります。椅子から床に移動するだけで目線の高さが大きく変わり、空間が一気に縦に広がる。二人とも身長が180cm近くある大柄な私たちにとっては、この空間の新しい見えがかりは大きな発見でした。人、空間、そしてそこに漂う空気感をとても繊細に、そして独特の『間』をもって捉える日本で活動を続けられていることは、とても貴重な経験なのです」

  • Text: Hisashi Ikai
  • Photo: Fuminari Yoshitsugu

2m26

メラニー・エレスバクとセバスチャン・ルノーの2人建築デュオ。ともにフランス出身で、2015年に独立し、広島を経て、京都に活動の拠点を構える。シンプルな工程から、機能的かつ現代的な家具および建築のアプローチを試みる。現在、京都郊外に購入した茅葺の民家を、自らの手で改修している。

http://2m26.com

「みみをすますように 酒井駒子」展

1114日(日)まで。

平日10時~17時、休日10時~18時。無休

PLAY! MUSEUM

東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3

Tel. MUSEUM 042-518-9625

同展は、20211211日~2022130日@長島美術館(鹿児島)以降、関西を含む数会場を巡回予定。

https://play2020.jp/museum/

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